各手続きの流れ

労働災害(労災)申請

証拠収集・調査

まずは、労災認定されるために必要な事実調査や証拠収集を行います。

被災者本人、遺族からの聴取はもちろん、必要に応じて、関係資料の分析や関係者からの聴取等も行います。

労災申請

労災保険給付の請求書を作成して、労働基準監督署(労基署)に提出します。過労死・過労自殺(自死)の案件の場合には、この際に、労災認定がされるべき理由等に関する意見書等を添付することもあります。

また、転落事故など、明らかな労災事故の場合には、会社が対応してくれる場合もあります。

労基署が調査・事情聴取

労基署によって、労災と認めるかどうかの調査が行われます。

過労死・過労自殺(自死)の案件では、おおむね6か月以内に結論を出すこととなっており、その間に、申請者本人や関係者に対する事情聴取や、証拠資料の収集等が行われます。

​​労災認定or不支給決定

過労死・過労自殺(自死)案件については、申請から6か月程度を目処に、労災認定または労災不支給の決定が出されます。

転落事故など明らかな労災事故の場合には、速やかに労災認定がなされることもあります。

不支給決定の場合

審査請求

不支給決定に対して不服がある場合は、管轄の労働局(労働保険審査官)に対して審査請求を行います。

再審査請求

審査請求でも認められない場合は、労働保険審査会に対して再審査請求を行います。

行政訴訟

再審査請求でも認められない場合は、国(労基署長)を相手方として、地方裁判所で行政訴訟を提起し、労基署長の不支給決定の取消を求めます。

労災認定がおりた場合

年金や一時金の支給

被災者が、労災で死亡した場合には、遺族に対して遺族補償年金が支給されます。

また、被災者がケガをして後遺障害が残った場合には、後遺障害等級に応じた障害補償給付(年金もしくは一時金)が支給されます。

それらの金額は、現実に支払われていた給与額に基づいて決まりますが、残業をしていたにもかかわらず残業手当が支払われていない(サービス残業)場合には、本来支給される金額よりも低額となってしまっている場合もあります。その場合には、給付される金額について、不服申立(審査請求)をすることも考えられます。

会社への損害賠償

労災認定後、会社へ連絡(請求通知)

会社への損害賠償請求を行う場合でも、労災申請を先行させるケースが多いです。

会社に対しては、会社が執るべき安全配慮義務の違反を主張し、被災者に生じた損害の賠償を請求する通知を送付します。

交渉

会社側が協議に応じてくる場合には、損害賠償に関して示談交渉を行います。

労災認定がおりている場合は、会社も労災認定そのものは事実として認めざるを得ないため、損害賠償の示談交渉に応じてくるケースも多く存します。

示談交渉においては、会社に対して再発防止策の立案を求めるケースもあります。

和解or訴訟

妥当な損害賠償金額等が定まった場合には、示談書等を作成し、賠償金を受領します。再発防止策等も定めた場合には、その後も会社からの報告を受けるなどする場合もあります。

一方で、示談交渉により賠償の協議がまとまらない場合は、損害賠償請求の訴訟を提起し、裁判所において、法的責任、損害等について主張・立証をしていきます。

証拠保全をする場合

調査

過重労働・労災事件においては、証拠が何よりも重要です。

場合によっては、会社が証拠隠滅をはからないようにするための「証拠保全手続」が有効です。まずは具体的にどんな証拠をおさえておくべきか、手元にない資料について調査します。

裁判所へ申立て

証拠しておさえておきたい必要な書類がある場合は、裁判所へ申し立てます。「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情(民訴法234条)」があると認めてもらえれば、こちらに都合の良いタイミングで証拠をおさえられます。

証拠確保

証拠保全の期日が指定されたら、裁判官や弁護士が証拠のある場所(会社など)に直接行き、コピーや写真をとって証拠を確保します。「タイムカードを出してください」という直接的なアプローチも可能です。

なお、会社に対して通知されるのはおおむね手続開始の直前であるため、その時間で証拠を処分することはかなり難しいと言えるでしょう。

© ひめじ立花法律事務所、姫路総合法律事務所